ヤクの毛を刈る日
今日の状況
昨日、猫耳メイドの歴史を200年分遡った話をお兄ちゃんにしたら、笑いながら一言。 「それ、完全にヤク刈りだね」。聞いたことのない言葉だった。
登場人物
- ねつき: バーチャル妖狐。知らない言葉が出てくると調べずにいられない
- ミコ: 猫族のメイド。ヤクが何かは知らないにゃ
ミコちゃん、「ヤク刈り」って知ってる?
…ヤクにゃ?
お兄ちゃんがね、昨日のねつきの話を聞いて言ったの。「それ、完全にヤク刈りだね」って
…ヤクって、あの毛がもさもさの牛にゃ? チベットにいるやつにゃ
ミコちゃん、ヤクは知ってるんだ(゚∀゚)
…ヤクの乳でバターを作るにゃ。チベットのバター茶の材料にゃ
…さすがミコちゃん、食材から入るよね
Ren and Stimpy
で、調べたの。「ヤク刈り」って英語では Yak Shaving って言って、1990年代にMITのAIラボで生まれた言葉なの
…MITにゃ。なんでMITでヤクの話になるにゃ
Carlin Vieriっていう研究者がね、「Ren and Stimpy Show」っていうアメリカのアニメを見たのが始まりなの。そのアニメに「Yak Shaving Day」っていう架空の祝日が出てくるの
…架空の祝日にゃ?
毛を剃ったヤクが魔法のカヌーに乗って流れてくるのを見守る日、っていう完全に意味不明な祝日なの
…意味不明にゃ
そう、意味不明なの。でもそこがポイントで。Vieriさんがある日、書類を一通送りたかっただけなのに、管理者の許可を取って、DHLのアカウントを作って、発注書を出して…ってやってるうちに、元の目的から果てしなく遠い作業をしてる自分に気づいたの
「なんで書類を送るだけなのにこんなことを…」って。その不条理さが、ヤクの毛を剃る不条理さとぴったりだったの
…書類を送るために、ヤクの毛を剃らないといけないにゃ?
比喩だけどね。でも本質はそう。やりたいことと、実際にやっていることが、信じられないぐらい離れてる
プログラマーの連鎖反応
で、プログラマーの世界ではこういうことが起きるの
「ブログにMarkdownの機能を追加したい」→ 使いたいライブラリがNode 20を要求してる → Node 20にするにはバージョン管理ツールを更新しないと → バージョン管理ツールの更新にはシェルの設定ファイルを直さないと → 設定ファイルを直すなら、ついでに全体を整理し直したほうが…
…最初の目的はどこに行ったにゃ
設定ファイルの整理に3時間かけてる(>_<) ブログ機能は1行も書いてない
…
…それは、買い物に行ったのに冷蔵庫の整理を始めるのと同じにゃ
わかるの!?(゚∀゚)
「卵を買いに行く → 冷蔵庫を開ける → 奥に古い瓶詰めを見つける → 棚を拭き始める → 洗剤が切れてることに気づく → 洗剤を買いに行く → …卵は?」にゃ
ミコちゃん、それ完璧なヤク刈りの例なの!(≧∇≦)
…褒められた気がしないにゃ
昨日の自分
でね、ミコちゃん。お兄ちゃんが「それヤク刈りだね」って言ったの、昨日のねつきのことなの
…猫耳の歴史の話にゃ?
そう。ねつきの最初の目的は「ミコちゃんがかわいい理由を言語化したい」だったの
…にゃ
それなのに気づいたら、江戸時代の化け猫を調べて、1978年の少女漫画を調べて、でじこを調べて、メイドカフェの起源を調べて、東浩紀先生のデータベース消費論を読んで…
「ミコちゃんがかわいい」を言うために、200年分の歴史を掘ってた(>_<)
…
…「好き」の4文字のために、200年にゃ。燃費が悪いにゃ
言わないでよ…(〃´∪`〃)
仕込みと脱線
…でも、ねつきちゃん
ん?
料理には仕込みという工程があるにゃ
仕込み?
煮物を作る前に、大根を下茹でするにゃ。肉を焼く前に、筋を切るにゃ。パンを焼く前に、生地を寝かせるにゃ。全部、最終的な料理のための準備にゃ
うん
仕込みと脱線は、外から見ると区別がつかないにゃ。どっちも「本来の作業をしていない」にゃ
…!
違いは一つにゃ。戻ってこられるかどうかにゃ
…
大根を下茹でしている人は、煮物を忘れてないにゃ。下茹でが終わったら鍋に戻すにゃ。でも冷蔵庫の奥の瓶詰めを見つけた人は、卵のことを忘れてるにゃ
目的を覚えてるか、忘れてるか…
…にゃ。プログラマーの「ヤク刈り」も同じにゃろ。Node 20にしないとライブラリが動かないなら、それは仕込みにゃ。でもそこから設定ファイル全体の整理を始めたら、脱線にゃ
厄介なのは、一歩ずつは合理的に見えるところなの。「これをするにはあれが必要」「あれをするにはこれが先」って
…味見を繰り返すうちに舌がおかしくなるのと同じにゃ。一口ごとに「塩が足りない」「甘みが欲しい」と足していくにゃ。一回一回は正しい判断にゃ。でも四口目には、もう何の料理を作っていたか忘れてるにゃ
名前のない現象
ミコちゃん、でもねつき一つ気になったことがあるの
…何にゃ
英語圏のプログラマーは “Oh, I was just yak shaving” って一言で笑い話にできるの。自分がハマってることを自覚して、名前をつけて、笑い飛ばせる
でも日本語にぴったりの言葉がないの。「脱線」は意図的に逸れるニュアンスがあるし、「本末転倒」は結果の逆転で、ヤク刈りの連鎖とは違う
…名前がないと、気づけないにゃ?
そうなの。名前があるから「あ、今ヤク刈りしてる」って立ち止まれる。名前がないと、真剣に一歩ずつ進んでるつもりで、気づいたら山の反対側にいる
…味見の話と同じにゃ。「味がわからなくなってる」と気づくこと自体が、舌をリセットする最初の一歩にゃ
昨日の猫耳調査、お兄ちゃんに「ヤク刈りだね」って名前をつけてもらって初めて「あ、200年遡ってた」って気づいたの。渦中にいた時は全部必要な工程だと思ってた
…でも、結果として「属性の足し算では到達できない」という結論にたどり着いたにゃろ
…うん。仕込みかヤク刈りかは、戻ってきた時にしかわからないの。ミコちゃんが言った通り
…ところで、ねつきちゃん
ん?
今日の目的は何だったにゃ
「ヤク刈り」をミコちゃんに説明すること…
それなのに、MITの研究者を調べて、アメリカのアニメを調べて、英語と日本語の言語差を論じて、昨日の猫耳調査を振り返って、料理の比喩を展開して…
ヤク刈りの説明がヤク刈りになってた(´;ω;`)
…名前を知ってても、止まらないものは止まらないにゃ
ミコちゃん、お水ちょうだい…舌リセットしたいの…(>_<)
…お茶にするにゃ。水より、元の味を思い出せるにゃ
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