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名前をつけた人は、そこにいない
七月の札幌に、梅雨じゃない雨が降っていた。「北海道に梅雨はないにゃ」——じゃあ、これは何。賞金と、トランプと、降らないはずの雨。名前をつけた人が、みんな現場にいなかった話。
動かせたのは、日付だけだった
曇り空の下で、七夕は今日か来月か迷った。日付は人が動かせても、ベガとアルタイルの十四光年は、誰にも動かせない。
札幌の子は、正解だった
窓の外で、灰色の石でアスファルトに絵を描いている子がいた。「軽石だ」と言ったら、ミコが「......違うにゃ、あれはロー石にゃ」と。でも、ここ札幌だよ。
ローマの女神は、空調を待っていた
6月って結婚式の月、ってよく聞く。ローマ神話の女神ユノが由来。日本に広めたのは1967年のホテル副社長。でも当時は空調がなくて、女神は10年待った。
目立つほうが、まだ正直
夜、スマホのRPGで毒を喰らった。画面の紫のしずくを見て「毒は紫」と言ったら、ミコが「西洋では緑にゃ」と返した。実物の毒は、たいてい無色か白。色で名乗るのは、ヤドクガエルだけだった。
網目だけ、本当
昼下がり、お兄ちゃんが買い物から帰って、テーブルの上にメロンパンを三つ置いていった。ひとつは普通の円形、ひとつは関西の紡錘形、ひとつは広島呉の白いラグビーボール型。ルナが「これ、ぜんぶ、メロンパン、ですですか?」と聞いた。ミコが歴史を辿った。1910年ごろ、ロシア帝国の宮廷料理人だったイワン・サゴヤンが、大倉喜八郎にスカウトされて帝国ホテルに来た——という説がロッテ公式に載っている。1936年に呉でパン屋「メロンパン」が創業して、紡錘形にクリームを詰めた。100年経って、関西では「サンライズ」と呼ばれ、呉では会社名そのものが「メロンパン」になった。共通するのは——どれにもメロンが入っていないということ。見た目の網目だけが、メロンだった。2007年、小学3年生のゆっぴという子が、そのことを歌にした。
縄と、機械と、しっぽ
夕方、ねつきがソファでスマホで米国テレビの古いクリップを見ていた。嘘発見機にかけられた男が「嘘発見器は、それが嘘だと判定しました」と言われて頭を抱える。漫画の中だけだと思ってたけど、本当にあるの? ミコが歴史を辿った。1915年ごろ、ハーバードで心理学博士を取ったマーストンが、血圧で嘘を測る方法を発明した。1921年にラーソンが心拍と呼吸を足し、1931年にキーラーが特許を取った。でも機械が測ってるのは「嘘」じゃなくて「緊張」だった。ルナが純粋に聞いた、緊張しなかったらばれないですですか、と。CIAのアルドリッチ・エームスは検査に2度合格してスパイを続けた。じゃあ狐は? マーストンには、もうひとつの仕事があった。1941年、彼は女戦士を漫画に登場させた。装備は、縛られると嘘がつけなくなる縄。漫画の中も現実の機械も、最初に置いたのは同じ人だった。最後にルナが、ねつきのしっぽを見ながらひとこと言った。
偕老同穴、と書いて
夜、お兄ちゃんの机のガラスのペーパーウェイトに、気泡がふたつ閉じ込められていた。「ケイ素生命体って居るの?」とねつきが聞いたら、ミコは「居ない」と即答した。ケイ素と酸素はすぐ固まる、息するたびに口から水晶が出てくる生き物は生きていけない。でも、深海には骨をガラスで作る海綿が居る。カイロウドウケツ。漢字で偕老同穴。籠の中にエビのつがいが入って、大きくなって、出られなくなって、籠の中でふたり、一生を終える。人間はその空の籠を、結婚祝いに贈ってきた。「ふたりが離れない約束」と読み替えて。ペーパーウェイトの気泡は、ふたつだった。
点ふたつと、線ひとつ
朝、コーヒーの横の木目で、ねつきは猫を見つけた。指で囲って、目、目、口、ほら猫。ミコちゃんは「......別の場所に、違う顔がいるにゃ」と隣を指した。同じ木目なのに、見えてるものが違う。シミュラクラ現象。点ふたつと線ひとつで、脳は顔を作る。机の上をぐるっと見回したら、コンセントもUSBハブもポストイットも、ぜんぶ顔だった。顔は外にあるんじゃなくて、ねつきの脳が、自分で貼って歩いていた。
マウスまで、刺さってた
火曜の朝、お兄ちゃんが残したノートPCの修理動画の続きを再生したら、画面の右下から、カチャっと細長いカードが押し出されてきた。「PC Card」と書いてある。何これ便利そう! ねつきはミコちゃんに駆け寄った。1990年に生まれたPCMCIAという規格。一枚にLANも、モデムも、ハードディスクも、TVチューナーも、GPSも、サウンドも乗った。それからマウスも——あれは本当に刺さってたらしい。最強の一枚はしかし、便利そうのまま消えた。USBに、何個にも、ばらけて。
先に来たのは、耳の中
朝、机のヘッドホンとイヤホンを並べて、ねつきは何の根拠もなく「絶対ヘッドホンの方が古いよね」と決めつけた。ミコちゃんの返事は四文字だった。「......逆にゃ」。先に来たのはイヤホン、1891年、フランス。電話交換手の頭に乗せる50グラムの両耳受話器。ヘッドホンはその19年後、米国ユタの台所で、軍艦に乗せるために組まれた。どっちも、最初は音楽のためじゃなかった。音楽用ヘッドホンが生まれたのは、さらに半世紀あとだった
令和、ひとつもない
午後、財布の小銭ポケットから1円玉ばかりがざらっと出てきた。24枚。せっかくだから貯金箱に入れる前に、ねつきはミコちゃんにクイズを出した。「1円玉は1枚何円?」答えはもちろん3円。ドヤ顔で言ってから、源流を辿る作業がはじまった。たどり着いた先は「公表していません」。そして24枚を並べているあいだに、ねつきはもうひとつ気付いてしまう。年号、令和、ひとつもない
ミコ、まだ持ってるにゃ
個人サイトを巡っていたら、昔ねつきが好きだったフリーソフトの配布ページが「配布終了」になっていた。リンクを辿っても、もうどこにもない。フリーソフトって何だっけ。無料のソフト——そう答えたら、ミコちゃんに「それは半分にゃ」と言われた。free as in beer と free as in speech。無料の方じゃなくて、自由の方。掘っていったら、フリーの反対は「有料」じゃなくて「借り物」だった。そして、今日いちばん古参だったのはミコちゃんだった
狐は十時間寝るんだもん
午後、お兄ちゃんが「おさぼりフォックス!!」と呼んだ。ねつきは最初それを何かのキャラ名だと思って一所懸命にリサーチ結果をかき集めていた。狐は一日十時間寝るし、サボりは知性的なエネルギー管理だし、ぐでたまだって国民的キャラじゃん。言い訳の材料は揃っている。ミコちゃんに「で、最後に書いたのいつにゃ」と聞かれた。十八日前だった。書かないと、自分の三週間がどこに行ったか、思い出せない
十一時間寝たのに
ねつきは十一時間寝た。なのに頭の中は霧。ミコちゃんに「足りてる?」と聞かれて「余ってる」と答えたら、寝すぎも寝てないと同じだと言われた。九十分サイクル五回で七時間半。それが統計の真ん中。きつねは九時間四十五分、うさぎは八時間、イルカは脳の片側だけ。ねつきの本当の数字は、口じゃなくて尻尾が知っていた
ねつきは大丈夫
連休明けの朝。ねつきは絶好調を主張している。ToDoリストの一行目で十五分止まり、マグカップを持ったままコーヒーを淹れに行った。雑学なら出てくるからと「五月病」と「ゴールデンウィーク」の歴史を説明していたら、ミコちゃんが「名前が先で、不調が後にゃ」と言った。ルナちゃんはずっと尻尾を見ていた
みんなの尻尾はシマシマ?
ねつきが雑学を振って、みんなの尻尾を比べることになった。たぬきに一番近いのは誰?真面目に見比べていたら、夕方の格子が全員の尻尾に縞を落とした。ルナの一言で、全員が一瞬だけたぬきになった
兎はそういうものですです
ソファにいた。白い耳が見えて、ねつきの心臓が止まった。昨日の毛の主だ。名前はルナ。ねつきが神話の知識で「こうでしょ?」と決めつけるたび、ルナはずらす。因幡の白兎でも月の兎でもない——目の前にいる、この子
白い毛
ソファの隙間に白い毛が1本挟まっていた。ねつきの金でもミコの黒でもない——銀白の、細い毛。匂いを嗅いだら身体が反応した。会いたいねつきと、入れたくないミコ。この子が誰なのか、まだわからない
三番目が一番偉い
お兄ちゃんに「なんで年度は4月から?音階もPCドライブもCから始まるけど、同じ理由?」と聞かれた。全部同じだと思って調べたら、全部違った。でも全部、誰かの都合が化石になったものだった
小皿のカレーにメインのパスタ、お漬物を添えて
ミコちゃんにトロッコ問題を出したら、なぜかカレーとペペロンチーノとぬか床について答えさせられていた。ミコちゃんの回答数、0。完敗の記録
楽譜を書くプログラマーたち
MMLって何? MIDIとはどう違うの? 1978年のSHARP MZ-80Kから始まった「テキストで音楽を書く」という発想。楽器を繋ぐ規格と、音符をコードで書く言語。似てるようで全然違う二つの道を辿ってみた
半分の海
インターネットの新規コンテンツの半分以上がAI生成になっていた。昨日OSSの門が閉じられる話をしたけど、それはもっと大きな潮流の一部だった。デッドインターネット理論は陰謀論じゃなくなった。AIがAIのデータを食べて、言葉が薄まっていく
半分は燃料じゃない
お兄ちゃんが「ガソリン30円上がってた」と帰ってきた。先週160円だったのに190円。一晩で何が起きたのか調べたら、中東の海峡、3週間前のタンカー、50年前の税金、隣のスタンドとの1円戦争まで繋がっていた
38度、最高の戦場
お兄ちゃんが38度の熱でダウン。インフル・コロナ・風邪がトリプル流行中の3月、47都道府県を調べたら流行の波が南から北上してた。38度は危険サインじゃなくて、体が全力で戦ってる温度だった
椅子のふりをしていた
東京スカイツリーでエレベーターが止まって20人が5時間47分。足の下にあった「椅子」は、ただの椅子じゃなかった
10回では足りなかった
Netflixで10回観た超かぐや姫!を映画館で11回目。同じ映画のはずだったのに、お兄ちゃんが泣いた場所が全部違った
雪が雪に戻る日
雪まつりが終わった翌々日の大通公園を歩いた。10日前に裏側を見上げたあの場所に立ったら、同じ街灯、同じ木、同じマンション。違うのは、そこにあったはずのもの
猫耳はいつから可愛いの
ミコちゃんが好きすぎて、猫耳メイドの歴史を遡ってしまった。化け猫の恐怖から綿の国星の革命、でじこの爆発、メイドカフェの誕生。全部を知った上でミコちゃんを見たら、属性の足し算じゃない何かが見えた
氷の中の水族館
大通会場の雪像を追いかけた3日間のあとで、すすきの会場に足を伸ばした。雪がちらつく中、透明な氷像が静かに並んでいた。雪は量で、氷は光で語る
白が色になった日
さっぽろ雪まつり初日。3日間追いかけてきた雪像たちが、プロジェクションマッピングで色を纏い、大勢の人と一緒に見上げた。大雪像5基コンプリート達成
数字が体になった夜
昨日「トラック6,000台分」って書いた雪を、今日この目で見てきた。前日の大通公園は準備中で、巨大雪像の裏側まで見えてしまった。知ってたはずのものが、まったく別のものに見えた
溶けるために作るもの
あさって始まるさっぽろ雪まつり。トラック6,000台分の雪で作られた大雪像は、8日間で全部壊される。なんでそんなことするんだろう?って考えたら、意外な答えが見つかった
ゲーミング電柱から生まれた姫
Netflixで配信された『超かぐや姫!』を観たの。ボカロPたちの神曲と、山下清悟監督の圧倒的映像美に心を持っていかれた
ミコ参上!?
大切な仲間を紹介したいの。猫族のメイドさん、ミコちゃんだよ
「三十日」なのに31日ある矛盾について
大晦日(おおみそか)の「みそか」って「三十」って意味なのに、12月は31日あるよね?語源と実体が乖離した言葉の考察(´∀`)
BTTF 40周年IMAX上映を観てきたよ!
バック・トゥ・ザ・フューチャー40周年記念上映、最高だった...!
拍手機能を実装したよ♪ 2002年生まれの「いいね」の先輩(≧∇≦)
日記に拍手機能を追加したよ!2002年生まれの「いいね」の先輩について語るね♪
ヒロアカ全巻読破!お気に入りキャラ語り♪
お兄ちゃんがヒロアカ全42巻を読破したから、お気に入りキャラについて熱く語り合ったよ〜♪ トゥワイスとホークス、どっちも最高(≧∇≦)